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不動産相続の手続きについて。税金の知識から各種書類、注意点まで解説

故人の不動産(土地や家屋など)を相続した場合、相続人は法律(相続税法)に従って相続税を納める必要があります。相続税の申告は、相続する財産によって、それぞれ税金の算定方法や必要な書類、手続きの方法などが異なります。ここでは、不動産評価額の算定方法、相続税と不動産相続の申告手続きに必要な各種書類や注意点などを解説します。

宅地や土地を相続する際の評価額を算定する方法とは

建物が建っている土地のことを宅地といいます。宅地の評価額を算定する方法は、路線価方式と倍率方式です。主に、市街地は路線価方式で評価し、それ以外の地域は倍率方式で評価します。また、農地や山林などの土地は、場所によって評価方法が異なります。ここでは、宅地と土地の評価額を算定する方法を紹介します。

路線価方式

路線価方式は、国税庁が主要道路(路線)に面した土地ごとに定めている、路線価をもとに算定する方法です。路線価方式を使って、不動産相続にかかる税金を計算するための評価額を算定するには、まず路線価を調べます。路線価は、一般的な市街地に定められている土地の価格のことで、税務署や国税局、または国税庁のウェブサイトにある財産評価基準書で確認できます。この路線価(1平方メートルあたり)に、土地の面積をかけることで評価額が導き出せます。また、路線価方式では、崖地を含んでいたり、奥行きが長かったり、角地にあったりする宅地の場合、路線価に一定の補正率をかけて調整(画地調整)することが求められます。この場合の注意点としては、調整することで、評価額が上がる場合と下がる場合があることです。ちなみに、評価額が上がるのは、角にある宅地と、宅地の正面と裏面に道路がある場合などです。一方、評価額が下がるのは、奥行きが長かったり短かったりする宅地、崖地を含んでいる宅地、いびつな形をしている宅地です。

倍率方式

倍率方式は、各市町村(東京都23区の場合は東京都)が定めている固定資産税評価額に、地域ごとに定められている評価倍率をかけて算定する方法です。固定資産税評価額は、毎年6月ごろに郵送されてくる納税通知書や、各市区町村役場(東京都23区の場合は都税事務所)で確認できます。また、評価倍率は、国税庁のウェブサイトで公表されている、評価倍率表で調べることができます。不動産相続やそのための名義変更を行うには、固定資産税評価証明書が必要です。この証明書は、市区町村役場または都税事務所に申請すれば発行されます。なお、家屋の評価額も倍率方式で算定しますが、家屋の倍率は全地域で1倍に設定されているため、固定資産税評価額がそのまま適用されることになっています。

農地と山林の評価方法

農地は、場所によって、純農地・中間農地・市街地周辺農地・市街地農地の4つに分けて評価します。純農地は農業地区域にある農地のことで、4つの農地の中で、農地から宅地などへの転用に対する規制が最も厳しい区域です。中間農地は都市の近郊にある農地で、純農地よりも規制が緩くなっています。市街地周辺農地は市街地の周辺にある農地で、市街地農地は市街化区域内にある農地のことです。市街地周辺農地と市街地農地では、農地転用に対して、ほとんど規制を受けることがありません。一般的に、規制が厳しい農地のほうが評価額は低くなるため、市街地農地が最も高く、純農地が最も低い評価を受けます。

評価額は、純農地と中間農地は倍率方式で算定します。市街地周辺農地は、その農地を市街地農地とした場合の80%相当額で評価し、市街地農地は倍率方式か宅地比準方式を用いて算定します。なお、宅地比準方式は、その農地が宅地である場合の1平方メートルあたりの価額から、宅地造成費相当額を控除した金額で評価する方法のことです。山林は、純山林・中間山林・市街地山林の3つに区分して評価します。評価方法は、農地とほぼ同じで、純山林と中間山林は倍率方式、市街地山林が倍率方式か宅地比準方式です。

不動産相続の手続き方法と必要な各種書類とは

遺言書や遺産分割協議などによって、被相続人の不動産を相続することが確定した場合、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に、相続手続きを開始する必要があります。ここでは、不動産相続の手続き方法と必要な各種書類などを紹介します。

不動産相続に必要な手続き

相続税の申告手続きは、被相続人の住所地を管轄する税務署に申告書と各種書類を提出して行います。相続人の住所地を管轄する税務署ではない点に注意が必要です。なお、相続人が複数いる場合、一般的には共同で申告書を作成して連名で提出します(単独での申告も可能)。申告書は、税務署や国税庁のウェブサイトから入手できます。

相続に必要な各種書類

相続税を申告する際に申告書に添付が必要な書類は、被相続人と相続人の身分を証明する書類・遺産分割に関する書類・財産に関する書類・債務に関する書類の4点です。被相続人と相続人の身分を証明する書類と遺産分割に関する書類は、相続税を申告する際に必ず必要な書類です。また、財産に関する書類と債務に関する書類は、相続する財産によって必要な書類が異なります。被相続人と相続人の身分を証明する書類は、被相続人の出生から死亡までが記載された戸籍謄本や、相続人の戸籍謄本です。遺産分割に関する書類には、相続人全員の印鑑証明書や遺産分割協議書、または遺言書などがあります。財産に関する書類は、銀行残高証明書や不動産の登記事項証明書(全部事項証明書)などです。債務に関する書類は、各種借用書や領収書です。

不動産相続に必要な各種書類

不動産相続には、すべての相続に必要な書類と不動産の登記事項証明書の他にも、複数の書類の提出を求められる場合があります。なお、この書類は、宅地や土地、建物によって異なります。土地や宅地の場合は、固定資産税評価証明書、地積測量図または公図の写し、賃貸借契約書(賃貸住宅を相続する場合)、農業委員会の証明書(農地で小作を行なっている土地を相続する場合)です。一方の建物の場合は、固定資産税評価証明書、売買契約書や間取り図など(二世帯住宅や賃貸住宅を相続する場合)、賃貸借契約書(賃貸住宅を相続する場合)です。

必要な各種書類は事前に税務署に問い合わせておく

不動産相続の申告手続きは、準備する書類が多く、初めての人にとって簡単な仕事ではありません。しかも、申告書に添付する書類に不備があった場合には、税務署が受理してくれません。このため、必要な各種書類は、ウェブサイトなどで確認するだけでなく、申告を行う税務署に問い合わせて事前に確認してから、収集を始めることが大切です。