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相続と贈与に関するよくある失敗談。あなたの認識間違っていませんか?

遺産の相続や贈与は、正確な知識を持っていなければ思いもよらぬ失敗を招くことになります。不明点を曖昧なままにして、誤った認識を持ったままで相続税や贈与税の申告などの手続きを進めようとすれば、本来ならば受けられる特例を受けられず、逆に不必要なペナルティを課せられてしまう恐れもあるのです。今回は、相続と贈与に関する様々な失敗例と、防止策について説明します。

親から子に生前贈与をしていたのに贈与と認められない

相続税の対策として効果的な方法のひとつに、生前贈与というものがあります。これは、生きているうちに子供や孫に自身の財産をあらかじめ贈与してしまうことで、相続する財産を減らし、相続にかかる税金を減らしてしまうというものです。贈与の際には贈与税がかかり、これは相続税よりも税率が高いため、一見すると節税にはなりません。しかし、非課税枠を上手く利用すれば税金をかけることなく贈与を行うことができます。しかし、贈与という行為について正しく認識していないことで結果的に税を多く納めてしまう事態が発生することがあるのです。以下に、よくある間違いに基づく失敗談のひとつを紹介します。

Aさんは自身の管理下にあり、2人の子供の名義となっている銀行口座に、非課税枠を使用して毎年それぞれ100万円ずつ振り込むことで、10年間で2000万円を資産移動させました。Aさんの相続開始時における税率予想は30%であり、これで600万円の節税に成功したように見えます。しかし、Aさんが亡くなり、相続を行う段階になって相談を受けた税理士が調査したところ、この贈与は不成立であったことがわかり、結果として2000万円の財産移動は相続扱いとなり、600万円の相続税を支払わなければなりませんでした。

Aさんから息子2人の口座への財産移動が贈与と認められなかったのは、Aさんが生前に贈与の契約を息子2人と取り交わしていなかったからです。贈与は契約であり、法的にはAさんが財産を譲り渡す意思表示と、息子2人が財産を受け取る意思表示をすることで初めて贈与が成立したと認められます。親が管理する子供名義の口座に財産を移動させることはよくあるケースですが、この場合子供の意思表示を確認できていません。死後に財産移動を贈与と明確に認めてもらうためには、生前に契約を取り交わした記録、即ち契約書を作成する必要があります。生前贈与を行う際には、事前に契約書を取り交わした上で財産移動を行わなければ、結果的に払う必要がなかったはずの相続税を支払うことになってしまうのです。

相続に強い税理士に相談しなかったばかりに様々なトラブルが発生してしまった

相続や贈与の手続きをすすめるためには、税理士選びも重要です。生前に被相続人の顧問を務めていた税理士でも、相続関連の案件の経験がなければスムーズな手続きができず、不要なトラブルを招くことになってしまいます。次に紹介するのは、税理士選びを誤ってしまったことで発生した失敗談です。

Bさんの父親が亡くなり、遺産相続に関する手続きを行う税理士を探さなければなりませんでした。Bさんは、生前父親が毎年確定申告の際に世話になっていた顧問税理士に依頼します。確かに顧問税理士は父親の財産について把握しており、一見するとベストな選択だと思われましたが、実際に手続きを進めていくうちに、5000万円もの相続税を支払わなければならないという結果が出ました。流石におかしいと感じたBさんが別の税理士に依頼して再調査を行ったところ、顧問税理士が行った評価が不正確であり、実態よりも財産を1億円近く多めに評価していたことが発覚します。税務署に更正の請求を行い、正しい額の相続税に修正してもらいましたが、調査と請求手続きで時間をかけてしまったために期限よりも納付が遅れ、延滞税を支払うことになってしまいました。また、結果的に税理士への報酬を2人分支払うことになってしまったのは言うまでもありません。後からわかったことですが、顧問税理士は相続に関する案件を担当していなかったため、不正確な評価を行ってしまったのでした。

財産について把握していると言っても、相続に関する経験が不足している場合、誤った評価を下してしまうことがあります。財産を把握している、生前被相続人が世話になっていたなどの理由で安易に税理士を選んでしまった場合、かえって失敗に終わってしまうことも少なくありません。相続について税理士に相談するなら、その税理士が相続についての経験があるかどうかなど、実績や得意分野をしっかりと判断しましょう。また、いかなる理由があろうと、定められた納付期限に税を納付できなかった場合、延滞税を払わなければなりません。加えて、申告も遅れてしまった場合は、5%から10%の無申告加算課税が追加で課せられます。手続きのさなか、万が一少しでもおかしいと感じたら、迅速に対応するようにしましょう。

相続や贈与で無用なトラブルを避けるために

今回紹介した2つの失敗事例は、いずれも正しい知識や認識を持ってさえいれば回避することができたものです。相続や贈与に臨むにあたっては、安易な気持ちで手続きを進めてしまえばどこかでトラブルが起きてしまいます。事前にしっかりと制度を調べたり、経験豊富な税理士に相談するなどして、正確な情報の下で手続きを行うようにしましょう。